電王戦FINAL大将戦の話

ある意味、電王戦らしい決着だったと思う。
個人的には大不満だが。

吐き出し注意。




電王戦FINAL、2対2で向かえた大将戦。
決着が付いた。

人間側の勝利で。

しかし、これは賛否両論有る内容だった。
内容としては、

プロがプライドも何もかなぐり捨てて、「コンピューターに勝つ為」だけに
既に知られている作戦を取った。
その結果、僅か21手で開発者の巨瀬さんが投了を宣言。

という物だった。

これは、野球で例えて言うなら、
プロ対ピッチングマシンで、「ヒット打ったらプロの勝ち、三振取ったら機械の勝ち」
というルールで、プロがバントした様なもんだ。
おまけに、このピッチングマシンのソフトを開発した人は、昔プロを目指して頑張っていた人だ。
プロという生き方を「選べなかった」人が、違う形で、しかも、プロ対機械の団体戦での勝利が
掛かった大将戦で、プロと対決するという、漫画だったら出来すぎと叩かれる様なドラマの場でだ。

この様な策を取ったプロへの思いは後にして、まず、こういった状況になってしまった、
背景を語ろうと思う。

まず、ルールとして、ソフトをプロ側に貸し出し、開発者は貸し出した後は修正出来ない。
つまり、重大なバグ、欠点が見つかっても、開発者側は何もする事が出来ないという事。
この状況で、「AWAKEに勝ったら100万円」という企画で、AWAKEに重大な欠点が見つかってしまった。特定の状況下で大損する手を最善手と判断してしまうのだ。
この欠点は、他のソフトでも起こる可能性があるが、AWAKEの場合は、重大な問題だ。
AWAKEはランダムとはいえ、その動作を起こしてしまう状況が発見されてしまったのだ。
どうやら「特定の状況下で大損する手を最善手と判断してしまう」という欠点は、昔からその界隈では有名な欠点らしい。
この企画の前に阿久津八段はAWAKEを借りて、3日目ぐらいで試しにやってみたところ、
見事にハマったとの事だ。

この企画の前にプロが発見したか否かは、問題点ではなく、この対局の最大の問題点は、
個人的には、「ルール」そのものだったと考える。

開発者の巨瀬さんはこの欠点をご存知では無く、企画の時に初めて知ったらしいのだが、
知ったところでルール上修正は出来ない。
技術的に修正は難しいポイントらしいが、他のソフトでは打つ可能性を下げる事は出来てるので、
修正が認められれば、こんな展開には成らなかっただろう。
この欠点は、勝負を成り立たせたければ、特例で修正を認めるべきだった。
「知らなかった開発者が悪い」という意見もあるが、そんなもん開発者だって人間なんだから、
知らない事が有っても当然だろう。
ソフトが「強くなる」様に手を加えるのは問題かもしれんが、「勝負が成り立つ」様に手を加えるの
は、何も問題では無い。


この対局に関して、様々な意見があると思う。
「勝つ」事だけを考えるのはプロとしてどうなのか、「勝つ」事だけを考えるのはプロとして当然、
投了宣言はプロに失礼、投了宣言はプロへの敬意、
こういった方法でしか人間は勝てない、欠点があるコンピューターはまだまだ人間には及ばない、
等々。

いろんな人がいろんな意見を言ってるけど、
勝つ為に最善の策を取った阿久津八段は「棋士」としては正しいし、
「プロがそんな手を打つとは思わなかった」と言う巨瀬さんの気持ちは正しい。
特に、巨瀬さんはプロに「成れなかった」人だ。
プロには、プロとしてのプライドを持ち、真っ向から戦って欲しかったという思いも、有ったと思う。
そんなハメ手を使わずに、純粋にプロと将棋を打ちたかったという思いも、有ったと思う。

まあ、個人的には、

プロは、「ファンを楽しませる事」が第一。
こういった方法でしか、人間はトップのソフトには勝てない。

って感想だが。

プロが最も勝つ可能性が高い作戦として、この方法を取った事は、
個人的にはプロ側の投了宣言だと思う。
プロがコンピューターに確実に勝つ為には、プライドも面子もかなぐり捨てて、
こういった方法を取らざるを得ないという事を、認めたという事だ。

阿久津八段の葛藤も有ったと思うが、プロは勝つだけじゃ、駄目だと思う。
K-1全盛期に、何度も優勝したホーストが人気がなくて、
一度も優勝した事がないバンナが大人気だったのが、良い例だ。
ファンは、プロに只勝つ事を求めていない。判定勝ちでは無く、KO勝ちを望んでいる。

前々から知られており、明らかに白ける策を、プロが取った。
プロというものは、勝負師である前に、広告塔であり、子供達の手本、憧れという存在だ。
この対局を見て、プロに憧れる子供が居るだろうか?
この対局を見て、将棋のプロに成りたいと思う子供が居るだろうか?

勿論、最後の電王戦にて、プロの初勝利が掛かった大将戦を迎えた阿久津八段の重圧は
計り知れない。この策を取るべきか取らざるべきか、阿久津八段も散々悩んだだろう。
それでも、その策は取って欲しくなかった。
何故なら、阿久津八段は「プロ」だから。
「プロ」は、子供達の憧れだけでなく、「成れなかった」人達の無念も背負っているから。
自分が成りたかったものに成れた人に、こんな格好悪い事をされたら、たまったものではない。
無念は募るばかりだ。
巨瀬さんが対局後の会見で、記者陣に顔を見せる事が出来ず、
まともにインタビューに答えられなかった気持ちは良く解る。
あの真っ赤な耳と、震えた巨瀬さんの声を聞けば、どんな表情をしていたかなんて解る。
そんな巨瀬さんの事を「子供か」と叩く人が居ると思う。
子供だよ。自分が成れなかったプロと、憧れていたプロと、対決する機会が得られたんだぞ。
自分の今までの苦労、挫折が報われただけでなく、ある意味「夢」が叶った瞬間だぞ。
子供に戻って何が悪い。感情を爆発させて何が悪い。
巨瀬さんの心中お察しします。

最後に、公式PVを置いておくので、是非見てください。
巨瀬さんを叩くなら、このPVを見てから叩いて下さい。